フランス料理に使われるシーフードの1つで「ムール貝」というものがあります。
この貝が日本国内で獲れるってこと、ご存知ですか?
「ムラサキイガイ」という黒い二枚貝がそうです。
元々はヨーロッパ付近に生息する貝であって、なんらかの原因によって日本近海に持ち込まれた外来種であるのです。
この貝はとても生命力&繁殖力が強いものであり、貝の蝶番付近から根の様なものを出し、どこにでも付着しています。
幼生のときから、どこにでも付着できるのでしょう。
おそらくは、ヨーロッパから渡来した船に付着していた貝が産卵し、そのまま居ついてしまったものだと、推測しています。
港や防波堤を見ていると、テトラポットや岸壁にびっしりと付着しているのをご覧になられた方も多いと思います。
さてこの貝、船体だけでなく海水の通るところは全て、付着すると思っても間違いありません。
実際に小型船舶では、船底の海水吸込み口付近にびっしりと付き、まともに海水を吸えなくなったという話も聞きます。
またムラサキイガイだけでなく、フジツボも同様です。
海水によって冷却清水を冷却しているクーラーの海水通路にフジツボが付いたために海水が通らなくなり、清水の冷却ができなくなります。
これらの貝類を取り除くため、クーラーの海水通路の掃除(「チューブ突き」と言います)をしたり、ドックに入渠したときに船体や海水吸入口を掃除します。
私も作業の一環で、冷凍機や空調機の冷媒を冷やすクーラーのチューブ突きをよくやりました。
とはいえこれらを頻繁にしなくてはいけないのは、かなり手間がかかります。
では付着しないようにすればいいのですが、そのような方法はあるのでしょうか?
「海洋生物付着防止装置」という機器があります。
これは船舶だけでなく、海水を使用している陸上の工場等にも使用されています。
文字通り、海洋生物つまり貝類の付着を防ぐ装置です。
この機器の動作原理は、大きく分けて2つあります。
1つは、薬液や薬剤の注入です。
海水配管や船底付の海水を吸入する弁(船底弁)の取り付け箇所(シーチェスト)に薬液注入配管が取り付けられており、装置で定められた時間ごとに定められた量を注入するというものです。
ストレーナ(ゴミ取り網)のケース内に、直径10cmくらいの薬剤を投入しておく物もあります。
これらの薬剤・薬液は、稚貝や幼生を駆除するための成分・分量が主です。
もう1つは、塩素と化合物による殺菌・駆除です。
+極と-極の電極を持つ機器類内部に海水を通します。
電極に電気を流し、海水を電気分解します。
すると、+極には塩素と酸素が発生し、-極には次亜塩素酸ナトリウムと水酸化マグネシウムが発生します。
次亜塩素酸ナトリウムは、+極で発生した塩素を元にして化合したものです。
このうち、次亜塩素酸ナトリウムと酸素と化合して残った塩素が、殺菌・駆除の力を持ちます。
塩素は生物にとっては有毒ですから、この残った塩素の量が多くなりすぎないよう、電極にかける電圧を調整します。
次亜塩素酸ナトリウムは、哺乳瓶やプールの消毒に使用する薬品でありますが、少量ならば生物にとって害は少ないです。
水酸化マグネシウムは「副産物」であり、これがスケール(水アカ)として-極に付着します。
付着量が多くなると電極が有効に働かなくなりますので、定期的に除去しなくてはなりません。
このようにして、船体や海水配管などの海水と触れる部分に貝が付着しないようにしています。
稚貝のときならばまだしも、親指くらいの大きさに成長した貝を除去するのは、非常に手間がかかります。
掃除のときに配管を外すと、貝が発する悪臭にまいってしまうんですよね。
また、配管内に貝がびっしりと付着していて、しかもその貝がピューと水を噴いているのを見ると、余計にまいってしまうんです。
「この貝で料理をすると・・・」などという考えは全く浮かばないくらい腹立たしい気持ちになるのは、私だけではないと思います。
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