船舶安全法違反についての考察
『沖縄県尖閣諸島の魚釣島に(中略)日本人10人が一時上陸した。第11管区海上保安本部は船舶安全法違反の疑いもあるとみて事情を聴いたほか・・・(後略)』
(8月20日 中国新聞より)
ここ最近、尖閣諸島への日本人による無許可上陸についてのニュースも、頻繁に流れています。
こういった行為が軽犯罪法違反の容疑で事情徴収を受けたようですが、ここではこれについては触れません。
なぜ船舶安全法違反の疑いがあるのか・・・
これについて考えてみました。
船舶安全法を違反することで罰則を受ける場合は、
1.満載喫水線を意図的に隠す、消す、表示を変えた場合
2.船舶検査証書や臨時航行許可証を受けずに船舶を航行させた場合
3.航行区域や従業制限を超えて航行させた場合
4.制限汽圧を超えてボイラを運転させた時
5.定員以上の人々を乗せた場合
6.無線電信機器が必要な船舶であるのに、機器を搭載せずに航行させた場合
7.中間検査や特別検査を受けることなく船舶を航行させた場合
8.上記各号の他、船舶検査証書や臨時航行許可証に記載された条件に違反して船舶を航行させた場合
9.検査を受けなければならないような改造や修理をしたにもかかわらず、検査を受けないで船舶を航行させた時
これらの9つが、主に挙げられます。
・・・で、尖閣諸島へ上陸したことで問われるとすれば・・・
上記の3.が、最も可能性が高いと思われます。
なぜ3.なのか・・・
航行区域は、平水・沿海・近海・遠洋の4つの区域があります。
非常に大雑把な話ですが、『最も陸に近く比較的平穏な海域が平水であり、以降、沿海・近海、最も陸から遠く危険になりうる海域が遠洋』と言えると思います。
これらの区域は、船舶安全法と同法施行規則により、細かく決められています。
ちなみに尖閣諸島は、近海区域となります。
航行区域は一般の船舶に適用されるものですが、漁船には適用されません。
その代り、従業制限と呼ばれるものが適用されます。
これは従業することができる漁業の種類を定めたもので、第1種・第2種・第3種・小型第1種・小型第2種の5つがあります。
ただしこれは船舶安全法にあるものではなく、漁船特殊規則に規定があります。
航行区域、従業制限のいずれも、いろいろとヤヤコシイ技術基準があり、船舶所有者からの申請により、それらの基準に基づいて検査を行い、決定されます。
また船舶安全法の第1条には、
『日本船舶は本法によりその堪航性を保持し、且つ、人名の安全を保持するに必要なる施設を為すに非ざれば、これを航行の用に供することを得ず』
とあります。
つまり、
『この法律を満たさない船舶を航行させたらアカンよ』
ということです。
従業制限や航行区域を決定するには、船舶がその航行させたい区域に適応し、安全に航行することができるだけの設備や構造が必要になります。
言い換えれば、たとえある海域で航行させたくても、そこで安全に航行できる十分な設備や構造を満たしていないと、航行することはできないということです。
尖閣諸島に上陸した際に使用した船舶は、私がTVで見た限りでは、19トン以下の小型船舶であったと思います。
ひょっとしたら、遊漁船だったかもしれません。(登録証は見ていませんが)
そういった船舶は、航行区域が沿海、または従業制限が小型第1種である可能性が非常に高いと思います。
前述しましたが、尖閣諸島は近海区域に存在しますので、航行区域が沿海または従業制限が小型第1種の船舶が島に近付くということは、船舶安全法違反となります。
なお、航行区域や従業制限は、船舶検査証書の『航行上の条件』に記載されています。
ここまでいろいろと書き散らしましたが、これらは筆者の個人的な意見および法解釈でありますので、様々なご意見等ございますでしょうが、批判はご容赦ください。
↑ こちらのクリックもお願いします。
ランクアップにご協力をお願いします。
最近のコメント